UXリサーチ vs. マーケティングリサーチ

Question about UX and Marketing Research

最近、日本でもUXリサーチに注目が集まるようになりました。このUXリサーチの関心の高まりと共に「UXリサーチとマーケティングリサーチは同じなのか。」という質問がよく出ます。今回は、UXリサーチとマーケティングリサーチそれぞれの定義と、UXリサーチとマーケティングリサーチの違いと共通点について取り上げていきます。

UXリサーチとは

UX(User Experience:ユーザー経験)リサーチは、Interaction Design Foundationの定義によると、ユーザーとユーザー経験を設計する上で、ユーザーが必要としていることを調べ、コンテキスト(ユーザーの環境や状況など)とインサイト(洞察から得られるもの)をユーザー経験の設計に活かす体系的な調査です。一言でいえば、ユーザー経験を創るための調査と言っていいでしょう。

UXリサーチは、元々は、人が使う機器やツールのユーザビリティから来ており、ソフトウェアやホームページなどでユーザビリティテストが行われてきました。その後リサーチの対象は、ツールなどのユーザビリティからユーザーの行動やニーズを理解するユーザーへと変わり、ユーザーリサーチと呼ばれるようになりました。さらにユーザーリサーチは、ユーザーの「経験」という観点が加わることで、UXリサーチへと進化してきています。

マーケティングリサーチとは

米国マーケティング協会(AMA、2004年)によると、マーケティングリサーチは、消費者、顧客、そして一般の人々とマーケターを情報を通じて繋げる機能です。その情報とは、マーケティングの機会と課題を見つけ、明らかにするために使われるものです。(マーケティングリサーチは)マーケティング活動を生み、改善し、評価することに活用されます。(また、マーケティングリサーチは)プロセスとしてのマーケティングに対する理解を深めます。マーケティングリサーチでは、マーケティングの課題に対処するために必要な情報を示し、その情報を収集する方法をデザインし、データ収集プロセスを管理し、結果を分析し、得られた結果を伝えるものです。一言でいえば、マーケティング活動のためのリサーチと言えるでしょう。

UXリサーチとマーケティングリサーチの違い

上記のそれぞれの定義からわかるように、UXリサーチとマーケティングリサーチは、どのような活動にリサーチ結果を活用するのかがことなります。すなわち、UXリサーチは、ユーザー一人ひとりが経験するものやコトをデザインするために行われるのに対し、マーケティングリサーチは、マーケティング活動のために行われます。

UXリサーチとマーケティングリサーチに共通すること

一方で、UXリサーチとマーケティングリサーチに共通することもあります。UXリサーチでは、主にエスノグラフィーやインタビューが行われるのですが、アンケート調査も必要に応じて行われることもあります。マーケティングリサーチにおいても、インタビューやアンケート調査が行われますし、マーケティングの課題によってはエスノグラフィー調査も行われます。つまり、UXリサーチもマーケティングリサーチも同じリサーチ手法を使うことがありますので、UXリサーチとマーケティングリサーチが混同してしまうことがあるのだと思います。

リサーチは活動の方向づけに重要な機能

もう一つのUXリサーチとマーケティングリサーチの共通点は、リサーチがデザインやマーケティングなどの活動が顧客や市場が求める方向に向いているかどうかを確認する機能を担っている点です。顧客や市場が求める方向を全く見ないで商品設計をしたり、マーケティング活動を行っていると、独りよがりの方向に走ってしまいがちです。そこで、活動に対するサウンディングボード(いわゆるご意見箱)として市場や顧客にリサーチすることで、顧客や市場が求める方向に軌道修正することに役立ちます。

大切な「ビジネス活動」とリサーチのパートナーシップ

逆の見方をすれば、リサーチも孤立した形で行うのではなく、商品デザインやマーケティングなどのビジネス活動というパートナーがいることで、その力が発揮できるものだと思います。「何のためにリサーチをするのか、どのタイミングにどのようなアウトプットであれば、リサーチした結果が次の活動に活かせるのか。」を常に意識することで、活動とリサーチの良いパートナーシップを持つことができると思います。

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