感性工学(Kansei Engineering)は、日本で生まれたアプローチですが、製品にひとの感性に響く製品づくりのアプローチとして、特に欧米では様々な形で発展しています。今回は、グローバル展開をしている欧米のものづくりのアプローチを取り上げています。
ひとが、いつ、何をどのように感じるか:真実の瞬間(Moment of Truth)を見つける
最初のステップとして、通常、「顧客が製品について、いつ、何をどのように感じるかを知る」ことから始まります。製品開発者自身が顧客の感覚と合致していれば、ある程度は開発者の感覚を使うこともできると思いますが、よく知らない海外の消費者の場合などは、そうは行きません。特に海外展開を視野に入れている場合は、顧客経験をより詳しく知ることが開発者自身へのインプットになります。
- 真実の瞬間 – Moment of Truth(MOT)とは:1980年代、スカンジナビア航空CEOのヤン・カールソン氏によって提唱されたアプローチで、顧客経験の中で顧客のタッチポイントの重要性を唱えています。
このMOTの考えは、顧客サービスに限らず製品設計にも適用されています。つまり、商品の見栄えから商品の使用中・使用後まで、顧客が商品からいつ・何から・どのようなことを感じるかを知ることで、製品設計で見るべきポイントを浮き彫りにできるからです。例えば消費財の場合、MOTといえば製品を使う経験に絞りがちになってしまいますが、顧客が製品を店舗で見かけたときに持つ印象もMOTになります。
顧客が感じたことを可視化・製品設計へ
ものづくりの匠の場合、直感的に顧客が見るポイントを感じ取って製品設計に直接活かすと思いますが、チーム(特に多国籍チーム)として製品づくりに取り組む場合、情報を誤解することがないように共有する必要があります。その手段として、観察・インタビューによる消費者調査、機器評価、官能評価などが使われます。一つの例ですが、下記のように顧客経験マップを作成し、タッチポイントを見つけて、顧客がどのように感じたかを可視化していきます。
言葉で表されない感覚を測る
チームで製品設計を行う際、「顧客が言葉で表さない感覚を、どのように情報として共有するか。」が課題になります。例えば、日本の消費者の感覚を欧米の開発担当者に伝える場合、英訳によって微妙なニュアンス(例えば、ふっくら、柔らかいの違いなど)が伝わらないことがあります。そのような場合、コラージュ(雑誌の切り抜き、写真など)を用いたり、絵による描写などによって消費者が感じたことを誤解なく伝える可視化が行われています。
特に商品を多国籍に展開する場合は、いかに誤解なく顧客経験を理解することが大切ですし、多国籍の人たちとチームで仕事をする際も、感性といった言語化しにくい情報を可視化することは大切だと思います。
次回引き続き、海外の製品開発で採用されている日本発のアプローチを取り上げます。