匂い、感触、味覚は、体験したその人しか感じ得られない感覚ですが、ほかの人が何をどのように感じるのかを知ることは、より良い商品開発やサービスの提供、そして効果的なコミュニケーション方法を作り出す上で大切です。
人の感情を測るトレンド
人が感じることを測ることは、グローバルイノベーションの中でもホットなトピックの一つです。最近事例では、顔の筋肉の動きから人の感情測定、声の音声からの感情認識、脳波(EEG)や血流から人の感情を読み取る試みが行われています。
感情と五感の関係
人の感情と感覚(味覚、聴覚、触覚、嗅覚、視覚)は、密接な関係があり、人の感覚を刺激するもの(例えば、映像やにおい)によって様々な感情が生まれてきます。もちろん、過去の記憶がよみがえって感情が高ぶることがありますが、これもそのときの感覚が刺激となり、記憶に影響しているといわれています。
感性を客観的に測る試み
今までは、ひとの感覚を客観的に測る方法として、ひとの感覚をものさしとして感覚値を測る官能評価、感覚を刺激するもの(例えば、味覚を刺激する食品)の物性を機器を使って測ることが主流でした。
最近のトレンドは、その人だけが感じる味・におい・触感をほかの人にもわかるように可視化・可聴化する流れが目立ってきています。
味の可視化
味を可視化した有名な例は、2007年のピクサー・アニメーション・スタジオのアニメーション映画「レミーのおいしいレストラン」で、以下がその映画の一シーンです。
この映像でもあるように、視覚だけではなく、音もその人(この場合、ネズミですが..)が感じる味覚を伝える重要な役割を持っています。
感性の可聴化 – ソニフィケーション
つまり、視覚以外に人が何をどのように感じたかを伝える手段として「音」があります。
ソニフィケーション(Sonification)とは、モノやコトの状態を音としてして伝える方法、「可聴化」のことです。モノやコトの状態を音として伝えると言えば、クリエイターがイメージ膨らまして音や音楽を作るものだと誤解されがちですが、実際にはソニフィケーションでは、人に伝わる感覚(たとえば紙の表面を触った触覚)をアルゴリズム変換し、音として伝えています。
この分野をリードしているのが、井出音研究所で、あらゆるものを可聴化するアルゴリズムを開発されました。実際、私も目に見えない分子(アドレナリン、セロトニンなど)の音を聞きましたが、音が体内の細胞に直に響いている不思議な感じがしました。
言語化できない感性は、間違って伝わることもあり、伝わっていると思っていても、実は全く伝わっていないことも多くあります。感性の可視化・可聴化を広めることによって、日本を含め、言語化できない感性情報が多いハイコンテクスト文化の国際的な可視化が進んでほしいと思いますし、進めていきたいと思います。