創業者Story③国際化と多様性とコミュニケーション

Globalization and communication

国際化と多様性は、このところよく目にする話題です。日本で生まれ育った私にとって、社会に出て海外の人々と接し、情報をどう伝えるかとどう人と仕事をすべきか、色々学びがありました。今回は、主に私の西ヨーロッパでの経験をお話します。

私が仕事でヨーロッパと関わりが深くなったのは、1999年以降のことです。出発点は紙製品の商品開発の仕事でイタリアに渡ったときのことでした。

気づき①- 自分の中のヨーロッパ諸国へのステレオタイプイメージ

渡伊するまでは、ヨーロッパと言えば、米国と同じく西洋。多少文化の違いはあると言えど、ヨーロッパ諸国は皆同じで、米国よりも歴史がある程度としか考えていませんでした。そして、イタリアといえば、陽気なイタリア人、食事の時にはワインを飲むのが普通、と思っていました。

これは全て私の思い込み。現地で仕事をしていると、だんだんイタリア人の顔が見えてきて、イタリア人がいつも陽気な訳でもないと感じました。職場で仲良くなった同僚から、暗い顔で愚痴をたっぷり聞いたこともありましたし、ワインを飲まないイタリア人もいました。

欧州で米国かじりのコミュニケーションで撃沈

当時、私が入ったチームは、イタリア人、ドイツ人、英国人、エジプト人、そして日本人からなっていました。西洋=米国=欧州と思い込んでいた私は、「徹底的なローコンテクストで議論に加わればいいんだ。」と思い、ディスカッションに入ろうとしましたが、全く議論の流れが読めない。しかも、イタリア人、ドイツ人、英国人が話をし出すと、まるで各自が乱打するように、主張のぶつけ合いで全く言葉を挟むスペースなし。結局2時間議論して、結論なしということが日常茶飯事でした。

その議論を呆然と見ていたところ、エジプト人の同僚が私にニヤッと笑って耳打ちした言葉。いまでも耳に残っています。「EUにようこそ。」

イタリアに滞在していたのは、3ヶ月だけでしたが、解けないパズルを持ち帰ったように、何かスッキリしない気分で帰国しました。「もっとうまく議論に入ることができなかったものだろうか。」

気づき② – 英国コミュニケーション≠米国コミュニケーション

ヨーロッパでの仕事の仕方やコミュニケーションが自分の課題だ、と感じたので、英国のビジネススクールで勉強することにしたのですが、ここでも別の気づきがありました。つまり、英語と米語では、多少発音や語彙違うだけだと思っていたのですが、それだけではありません。話の持って行き方も違います。単刀直入に本題に入る方が良い米国人とは違い、英国人との会話やメールでは、社交的な内容を一筋入れるケース(例えば、天気の話)方が話を進めやすいということが多々あるのです。もちろん、人によりけりですが。

気づき③ – フランスでのカフェや食事の役割

その後、がっつりとフランス人と仕事をする機会がありましたが、ここで学んだのが、カフェと食事の大切さ。朝、カフェでコーヒーを飲みながら、雑談。ランチを取り、食後のコーヒーを飲みながら雑談。でも雑談はただの雑談ではなく、相手の「人となり」を知ったり、ちょっとした情報交換をする貴重な場なのです。

実は、このカフェや食事が重要で、会議の参加にも役に立つことに気がつきました。つまり、フランスでの会議では参加する(参加=自分の意見を言う)ことに意義があるのですが、なんでも発言すれば良いというものでもありません。事前にカフェでの雑談や食事から相手の考えやコミュニケーションのペースを知ることで、うまい具合に会議に溶け込み、参加しやすくなります。

また、フランス人と仕事をしていると、自己主張が強いと感じることもあったのですが、あえて会議で論理的に説明を求めず、カフェや食事でその主張のコンテクスト(背景や状況など)を知り、立ち回る方がスムーズに仕事が進むことがわかりました。

気づきの総括

  1. 自分の肌感で知る・理解する:メディアなどで勝手に自分が作り上げた他国や文化へのステレオタイプイメージは、直接自分の肌感で崩す必要があります。
  2. 人間だもの – ひとの気持ちは組織の接着剤:論理的思考も大切ですが、すべて論理で仕事が進むわけではない、ということをひしひしと感じました。そして、飲食はコミュニケーションの緩衝材になってくれます。
  3. 意見のぶつけ合い→新しい創造物後々にわかってきたのが、イタリアで経験した各自の乱打状態の会議は、実は意見のぶつけ合いで、そこから新しいアイデアやアプローチが生まれるプロセスなのだ、ということです。もっとも慣れないと結構タフなプロセスですが。

リサーチのアウトプットのあり方

最後に、国際化、多様化が進む中で、リサーチのアウトプットはどのような形が良いかについて、少し触れておきます。

  • アウトプットを出す前に、受け取る相手を知る→腹落ちしやすい構成に:コミュニケーションのあり方と同様に、リサーチのアウトプットも組織や人によって異なります。相手によっては、徹底した文書説明が良い場合もありますし、イメージや映像の方が良い場合もあります。場合によっては、先入観を崩すひと工夫も必要かもしれません。
  • アウトプットの中身 – 主張の裏付けとしての事実:リサーチからゲットした事実をバックに主張すると、意見が通りやすくなります。乱打戦の議論に入りにくい人にお勧めです。

以上は、私のヨーロッパでの気づきですが、アジアの国々や人々と仕事をする中で、別の気づきもあります。後日、機会があれば、触れていきたいと思います。

来月は、海外での市場調査について、見落としがちな点をいくつか取り上げてお話します。