創業者Story② 感性に関するリサーチ、米国・日本

今回は、JDR代表の私自身の経験と感性との関わりについてのお話第2弾です。

米国にて – その①ユーザー行動マップを作る

さて、官能評価担当になって数か月後、私は本格的に日本で官能評価を立ち上げる準備として、米国オハイオ州に向かいました。1993年のことです。

完全にお勉強モードで渡米したのですが、初日に手渡されたのはユーザーのクレンザー行動マップを作るプロジェクト。つまり、クレンザーを手に取るところから、洗顔、すすぎ、そして洗い終わるまでの動作を観察し、なぜその動作をしたかを聞き出して、さらに各動作のときに感じた感覚をインタビューから引き出し、官能評価につなげるものです。イメージとしては、「感性を科学的に捉える」のブログで紹介した下記のようなマップです。

当時は、手渡されたアサインメントを見て全身凍結。というのも、インタビュー調査は人生初。しかもインタビュー相手は米国人。心理学者のスーパーバイザーに頼んでインタビューのアドバイスをもらいましたが、”OK, do it. Go!”の一言。そう、インタビューとビデオ撮りすべて一人で実践することに。なんとか10名ほどインタビューした後、撮ったビデオを見直し、ユーザー行動マップを作成。その後、官能評価の部分はチームで議論して、マップを仕上げて行きました。このマップは日本でも重宝されたので、ホッとしたものです。

米国にて – その②リサーチファンダメンタルズを学ぶ

米国本社は消費者理解に力を入れていることもあり、滞在中は上記のプロジェクトと並行して、官能評価の他に消費者調査の手法や統計について、勉強する機会が豊富にありました。その時に感じたことは、官能評価やリサーチ手法にしても、一点の曇りもなく原理を理解することが大事(さもなくば、突っ込まれる)、徹底したローコンテクストの社内コミュニケーション(つまり、すべて説明できること)でした。帰国する頃には、すっかりローコンテクストコミュニケーションに慣れてしまい、帰国後しばらくはKY状態でした。

日本にて – 消費者に助けられ、官能評価パネルを立ち上げる

帰国後、一般消費者を対象としたスキンケア製品の官能評価をしていたのですが、リクルートに手間とコストと時間がかかり、どうも効率が悪い。そこで米国のチームが行っているように記述分析パネル(Descriprive Analysis Panel)を作ることを上司に提案。一度作ってしまえば、山積みのテスト依頼もさばけ、運営コストも低く済むと考えたからです。「No! 6ヶ月から1年もトレーニングだけに時間を使うなんて!」と猛反対。「2ヶ月だけ下さい。2ヶ月で官能評価パネルを確立させます。」と頼み込み、じゃあ、やれるものならやってみたら、という感じでOKが出ました。

ここで助けてくれたのが、日本女性の消費者でした。官能評価パネルの募集をかけたところ、3倍以上の人が応募してくれて、その中から感度と表現力が高い人を選びましたが、全般的に化粧品への好奇心が高く、テクスチャーのわずかな違いにも気がつく人ばかりでした。トレーニングも熱心で、残ってトレーニング内容の復習をしていた人もいたのです。おかげで約束の2ヶ月で官能評価パネルを確立することができました。

感性についての気づき

化粧品の官能評価は5年ほど担当し、その後は消費者調査の業務に移りましたが、当時も今も、感性については様々な気づきがあります。

  • 感性の視点 – 日本人の「場」、米国人の「個人」:米国では、個人を起点とした感性を強く感る一方、日本で感性と言ったときに、個人の視点以外にも場(周りの人も含む)への意識や影響を強く感じます。もちろん、個人差はありますが。
  • ローコンテクストのリサーチ手法でもれ落ちている感性情報:米国で開発されたリサーチ手法(記述分析パネルなど)では、感性を具体的に説明できる言語表現や数値で捉えることがまだまだ主流です。(もちろん、イメージなども多く使われ始めていますが。)しかし、日本の消費者は状態を直感的にオノマトペで表現したり、個別の数値で表せない複合的・微小な感覚を感じとることがあります。これをどのように付加価値といて海外へ伝えていくかは、継続的な課題だと感じています。

最後に。におい・音・味などの感覚は、人の気分を左右しますし、ひとの気持ちをハッとさせるモノやコトに出会うこともあります。ユーザー感性を科学的にとらえ、世界へ。会社のミッションです。

来月は組織とリサーチについてのトピックを取り上げていきます。