マーケット環境を観る – PESTEL分析

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今月は、グローバルビジネスとリサーチについて取り上げています。今回は、第一弾として、マクロな視点でのマーケットリサーチです。

海外ビジネスを検討する際、まず、調査で集めておくべき情報は、狙う市場の環境に関する内容です。つまり、何が市場に影響を与えそうな政治経済等の要因の情報収集と分析をすることで、狙う海外の市場の進出準備ができますし、不測の事態を出来るだけ避けることに役立ちます。この市場の外部環境を分析するのに便利なのがPESTEL分析です。

PESTEL分析とは

PESTEL分析(または、PESTLE分析)とは、マーケットを取り巻き、影響を与える6つの要因を分析する方法です。すなわち、PESTELは、以下の通り、市場の6つの要因:Political(政治的)、Economic(経済的)、 Social (社会的)、Technological(技術的), Environmental (環境的)、Legal(法的)要因を指します。

PESTEL analysis

外部環境要因内容情報の一例
P- 政治的内政や外交関係等、ビジネスに影響を与える政治的要因課税方針、外国企業誘致
E- 経済的その国の経済全体、ビジネスに影響する経済的要因景気動向、金利、雇用率、物価動向
S – 社会的特にビジネスに影響する社会的文化的要因人口変化、ライフスタイル変化
T – 技術的ビジネスに影響する技術要因や活用できる技術要素セキュリティ、通信状態、インフラ
E – 環境的ビジネスに影響する環境問題および環境要因水質汚染、ごみ処理施設の普及
L – 法的ビジネスに影響する法規制や法制度など商法、個人情報保護法、景品表示法

元々は、PEST分析

PEST分析は、1967年にハーバード大学のFrancis J. Aguilar教授がビジネス環境をマクロ的にざっと分析するために提唱したことが始まりと言われています。その後、環境(Environmental)と法律的・法規制的(Legal)要因が加わり、PESTEL分析(または、PESTLE分析)に進化しています。

PESTEL分析でわかること、わからないこと

  • わかること:ビジネスに影響を与える外部要因がわかります。たとえば、欧州の法規制的要因として、2018年5月からスタートしたEUのGDPRが挙げられます。GDPR(EU一般データ保護規則)は、欧州に進出している日本企業にとっても個人データの取り扱いに大きな影響があります。
  • わからないこと:あくまでもPESTEL分析は環境要因の分析なので、業界内の勢力図や業界への参入障壁、具体的なビジネスチャンスは見えにくいと言えます。

また、市場の外部要因は、政治情勢や経済情勢の変化等、変わることがありますので、情報を適宜更新していくことが大切です。

PESTEL分析の主な情報源

PESTEL分析の情報は、基本的に2次情報(すでに公表されている情報)が中心です。主には、政府の発表、政府統計局、新聞ニュース、業界団体からの情報、業界誌、産業調査レポートなどです。

海外市場のPESTEL分析を行う場合、言語の問題や現地でしか集められない情報がありますので、現地の状況とターゲットとするビジネス業界に精通している調査会社に依頼するのが一般的です。

PESTEL分析の際に確認しておくべきこと

  • 外部の調査機関に委託する場合 – 委託する調査機関が現地のビジネス業界に精通し、現地の企業やキーパーソン等とつながりを持っているか、確認することをお勧めします。可能であれば、事前に情報収集の実務を行うリサーチャーと話をし、リサーチャーの経験や知見、そしてリサーチ方法を確認できることがベストです。
  • 自力でPESTEL分析の情報を収集する場合 – 情報公開の時期や情報収集の方法も併せて取っておくことが原則です。例えば、統計局のデータでは、調査の概要や用語の解説などがありますので、データと併せて読み込んでおくことをお勧めします。しかしながら、日本で未知の海外市場のPESTEL分析を行うには限界がありますので、現地に精通している調査機関とタッグを組んでPESTEL分析を行うことをお勧めします。

海外の市場環境の調査をしたいけれども、どの調査会社が良いかわからない場合、お気軽にご相談ください。

PESTEL分析の次のステップ – SWOT分析

一般的に、PESTEL分析の次に行われるのが、SWOT分析です。SWOT分析とは、自社の内部環境 – すなわち、自社のStrengths(強味)、Weakness(弱み)と外部環境 – Opportunities (機会)とThreats (脅威)を分析することで、ビジネス戦略を策定することに用いられます。

ただし、自社のビジネスのチャンスや脅威を分析する場合には、PESTEL分析よりもさらに業界に特化した情報が必要になってきます。例えば、狙う市場の競争状態や市場占有率などです。競合相手がいないと思われるブルーオーシャン市場においても、現在代替品としてどのような商品やサービスが利用されているかを知っておく必要があります。

次回は、グローバルで広く行われている産業調査、特に英国の調査会社のインダストリアルリサーチのアプローチについて取り上げていきます。

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