官能評価 – 人の感覚は優れたセンサー

Skin cream

今月のブログでは、人の五感を使った評価や調査、すなわち感性リサーチや官能評価について、取り上げていきます。今回取り上げるお話は、官能評価(センサリーまたはセンソリー評価)についての内容です。

人の感覚を「ものさし」として評価を行う方法

英語では、Sensory Analysis、Sensory Research等、Sensoryという単語がよく使われます。Sensory(センサリーまたはセンソリー)はそもそもSenses(ヒトの感覚)という言葉から由来しています。つまり、ヒトの感覚(嗅覚、味覚、触覚、聴覚、視覚)を使って、消費者と直接接点を持つ製品(例えば、食品等)の機能や品質を評価する方法です。官能評価といえば、すぐに食品や飲料などが頭に浮かぶと思いますが、化粧品、香料、車などの品質評価にも用いられています。

ヒトの感覚を使って製品評価をする理由

ヒトの感覚は非常に優れたセンサーで、複数の製品特徴を同時に評価することができます。例えばスキンケアクリームの場合、ヒトの感覚では、色、感触、におい等を一度に感じることができますが、機器を使って評価するとなると、カラーメーター、粘度計、水分計等、様々な機器を準備しなければなりません。また、機器で製品の評価をしたとしても、その値がヒトが感じるレベルなのかどうかも確認する必要があります。

消費者調査、官能評価、機器評価との関係

製品の評価の方法には色々ありますが、消費者調査、官能評価、機器評価はそれぞれ以下のような位置づけと、とらえてみてください。官能評価は、消費者を対象とした調査と測定機器を使った評価の中間と位置付けて良いでしょう。

◊主に官能評価でわかること

  • 機器を使った評価に比べ、ひとが感じた製品特徴がわかる
  • 消費者調査と比べ、具体的にどの製品特性がひとの感覚の刺激になったかがわかる

◊主に官能評価ではわからないこと・できないこと

  • 過去の経験やブランドイメージなど、製品自身の特性に直接結びつかないこと
  • ひとが感じることができない微小な違い

官能評価について、よくある質問

官能評価にもいくつかタイプがありますので、来週詳しくお話いたします。ここでは、官能評価について、よくある質問をいくつか挙げてみました。

♦消費者調査と官能評価の大きな違いとは?

消費者調査は幅広く、「消費者」に調査をする方法であるのに対して、官能評価は人の「感覚」を使ってモノの評価をする方法です。つまり、機器を使った評価のように、評価の条件を一定にコントロールすることで、様々な影響を受けることなく感覚のものさしを使って、製品を評価しています。つまり、以下のように評価の条件をコントロールしています。

  • 官能評価でテストする製品名やブランド等を目隠し(ブラインド)⇒ブランドや製品名による評価への影響(バイアス)を避ける
  • テストする製品の量は一定⇒製品量の違いによるバイアスを避ける
  • 官能評価のテスト環境や通常、温度、湿度、光源が一定の環境の個別ブースで行われる⇒テスト環境による評価へのバイアスを避ける

♦官能評価は誰でもできるのか?

一般的に、官能評価の評価者は、一定の条件を満たす(違いを識別できるかどうかなど)人を選び、評価を行います。例えば、記述分析法(Desriptive Analysis)では、2か月~6か月(長い場合は1年)の間、評価者に対して官能評価の訓練を行います。

♦官能評価で製品の好き嫌いを聞いていいのか?

もちろんです。ちなみに、官能評価には嗜好を聞く嗜好型評価と製品特性を分析する分析型評価があります。気をつけないといけないことは、製品評価を行う環境が消費者が製品を使う環境とは違いますので、官能評価の嗜好データは、消費者が感じる製品の嗜好と必ずしも一致しないということです。

♦官能評価の結果は、何に活用されるのか?

官能評価の結果は、主には消費財の製品開発に活用されます。米国では、広告等の表現の裏付け(Claim Support)として用いられることもあり、ASTM規格として官能評価方法の規格があります。

海外での最近のトレンド – 官能評価と消費者調査で消費者インサイトを解読

官能評価と消費者調査を組み合わせて分析することによって、消費者がいつ・何を・どのように感じたのか、消費者のタッチポイントを分析することも行われています。

また、国によって同じ製品でも好みや感じ方が異なる場合がありますので、分析型の官能評価と各国の消費者調査を組み合わせ、国による嗜好の違いを分析することも行われます。

次回は、官能評価の方法について取り上げます。特に、海外でよく行われている評価方法を中心にお話します。

Scroll to Top