官能評価のタイプと海外でよく活用されている評価方法

taste testing

官能評価についての情報は日本では非常に限られているのですが、欧米ではSensory Evaluation: センサリー評価(官能評価)の研究が専門的に行われ、官能評価に特化した調査会社やコンサルタントも活躍しています。また、官能評価のデータ収集と分析専用のソフトウェアもあります。

このブログでは、最初に官能評価のタイプについてお話し、次に海外でよく使われている記述分析方法についてお話します。

官能評価のタイプ

官能評価には様々な方法がありますが、対象者別に分けると、消費者型官能評価とエキスパート型官能評価に分けることができます。この2タイプの位置づけは、下記をイメージしてください。

  • 官能評価といっても幅広く、消費者型官能評価は会場調査(CLT:セントラルロケーションテスト)として試飲したり、製品を触って評価する等、消費者調査の一部として実施されています。
  • エキスパート型官能評価は、通常一般消費者の中から官能評価パネリストとして適した人を選定し、一定期間訓練をして、官能評価を行う方法です。位置づけとして、機器評価に近いアウトプットになります。

ざっくりとした量的消費者型とエキスパート型官能評価の違いは、次の通りです。

この中のエキスパート型官能評価の中で、海外の製品開発(R&D)部門でよく使われている方法に、記述分析方法があります。

記述分析方法(Descriptive Anaysis)とは

記述分析方法とは、各評価項目に対して訓練したパネリスト(評価者)の感覚尺度を用いて評価する方法です。

記述分析方法には、米国のTragon社(現:Curion社)によって開発されたQDA(Quantitative Descriptive Analysis)という方法と、同じく米国のSensory Spectrum社によって開発されたSpectrum Descriptive Analysisという方法があります。QDAとSpectrum法は似た方法ですが、いくつか違いがあります。例えば、QDAは目盛のないラインスケールを使うのに対し、Spectrum法は目盛のついたスケールを使うことなどです。

海外で記述分析方法がよく活用されている理由

米国で官能評価といえば、一番に挙がってくるのがこの記述分析法です。そのおもな理由には、以下の内容が挙げられます。

  • 一度確立すれば、消費者調査より早く・安くテストができる:一般消費者調査と比べ、人数が少なくて済み、リクルートの手間なく、すぐに開発品のテストをすることができます。特に、テストする開発品や製品がほぼ毎日出てくるような状況では、非常に効率的な評価手段であると言えます。
  • 客観的・具体的なアウトプットなので、開発製品の設計に役に立つ:アンケート調査と比べ、具体的な項目(例えば、浸透スピードなど)の評価結果があるため、開発中の製品設計に使いやすいメリットがあります。
  • 機器評価と比べ、ひとが感じるレベルがわかる:例えば、機器で浸透スピードを測っても、ひとが感じるレベルかどうか(つまり「閾値」)がわかりませんが、ひとの感覚をものさしとした官能評価では、製品特徴を変えた場合でも、ひとが感じことができる違いかどうかがわかります。

記述分析方法の導入課題

では、「記述分析法を導入すればいいのではないか。」ということになりますが、記述分析法を導入するにはいくつか課題もあります。

  • 特別な設備・統計解析や評価者訓練の知識が必要
    • 記述分析法では、温度・湿度・光の条件を一定にし、評価者用の個別ブースを備えた設備が必要になります。機器による評価と同じく、評価への影響を避けるためです。
    • 分析も、多重比較法による検定や主成分分析等の統計解析手法が使われます。
    • また、評価者(パネリスト)の訓練においても、評価者の様子を見ながらデータのバラツキと再現性を確認する必要があります。
  • 訓練の期間が必要
    • 訓練の期間は、通常2か月~6か月かかります。その間訓練のみに集中し、開発製品の評価ができないため、訓練の終了まで待つか、訓練期間は代替えのテスト方法で開発品の評価をすることになります。
  • 毎日評価をする開発品や製品がない場合は空回り
    • 基本的に、ほぼ毎日評価をする開発品や製品があれば、記述分析法は非常にメリットがありますが、3か月に1回や半年に1回しか評価する製品がない場合は、評価者の評価感度の維持だけに費用と労力を費やすことになります。つまり、テスト品がない場合でも、製品を評価し続けないと、評価者の感覚が落ちてしまうからです。
  • 評価者に対象製品の嗜好は聞けない
    • 訓練を受けた評価者は、製品の特性を細かく評価できますので、一般消費者とはかけ離れてしまいます。一般消費者の嗜好や感じ方を知りたい場合は、消費者調査が適切なアプローチだといえます。

特別な設備を持つのが難しく、トレーニングの時間を取りたくない場合は、消費者による官能評価がお勧めです。弊社では、官能評価のサポートもしていますので、詳しい内容等お気軽にご連絡ください。

来週は、欧米のものづくりに広がっている感性工学アプローチについてお話します。