ハイコンテクスト文化と感性の役割

communication gap

8月の「コンテクストと顧客調査」というブログ記事では、顧客調査の枠決め(状況設定)という位置づけで、コンテクストの説明をしました。今回は、異文化コミュニケーションで取り上げられるコンテクスト(コンテキスト)文化を中心に、コミュニケーションにおける感性の役割についてお話します。

文化のコンテクストとは

文化のコンテクストについて、初めて取り上げたのは、文化人類学者のエドワード・ホールの著書(1976)『Beyond Culture』です。エドワード・ホールによると、文化のコンテクストは、その(国の)文化のコミュニケーションのあり方を指しています。特に、ハイコンテクスト文化とローコンテクスト文化の違いは、以下のように表されています。

  • ローコンテクスト(LC)文化:人が外に発するコミュニケーション手段(言語など)によって情報を伝える文化。代表的な国:米国。
  • ハイコンテクスト(HC)文化:雰囲気や物理的なもの(例えば、音や形)など、人が外に発するコミュニケーションの手段以外でも情報を伝える文化。代表的な国:日本、韓国、中国。

ハイコンテクスト文化を作っているもの

『Beyond Culture』によれば、ハイコンテクストを形づくっているものは、主には、歴史や経験などです。つまり、過去から蓄積された情報が受け継ぐ形で共有されていれば、異文化の人が入らない限り、わざわざ情報を伝える必要がないため、ハイコンテクストに向かっていきます。これは、企業文化でも同じことが言えると思います。

ハイコンテクスト(HC)文化のモノやコトのアート要素

エドワード・ホールの著書からの大きな発見はハイコンテクスト文化を持つ国では、1)モノやコトを通じて何かを伝えることが多いこと、2)モノやコトに感性を刺激するアート要素が多いことです。

たとえば、9月17日は敬老の日。その敬老の日のプレゼントとして、高齢者にも食べやすいふわっふわっのケーキや手書きっぽい丸文字で書かれた「いつまでもお元気で」の掛け紙をつけたプレゼントを見かけます。手書き風の丸文字はやさしさが伝わりますよね。

もちろん、米国でも気持ちを表すプレゼントなどがありますが、特に日本では、色使い、触った感じなど、五感に直接伝わるモノやコトがたくさんあることに改めて気づきます。

ハイコンテクスト文化から生まれたものを海外へ

ハイコンテクスト文化の日本から生まれたもので、ローコンテクストの文化の人々の感性を刺激し、新しい価値として気づきを起こすモノやコトはたくさんあります。たとえば、とんかつやおにぎりなどの食べ物の風味や食感、日本製のタオルや手ぬぐいなどの手触り・肌ざわり感、夏の涼しさを音で伝える風鈴などです。

♠注意しておきたい① – 日本のものを海外で売る場合

では、日本のものを海外に持っていけばいいのではないか、と思ってしまいますが、いくつか注意することがあります。

  • その国固有の文化や風習の違いに注意:例えば、味や風味が受け入れられない場合や、色の持つ意味が異なることがあります。⇒現地の文化や風習(つまり、コンテクスト)を理解して、適宜その国に合う形でカスタマイズ
  • 日本の感性表現がわからない・重要でないと感じられるケースも:日本のモノやサービスなどは詳細に目配りがあると言われますが、外国人にとっては、まったく気が付かなかったり、そこまで必要でないと思われるものもある場合があります。⇒ターゲット外国人にとっての感性表現の重要度を確認。重要でない場合は、そのモノ・コトを変えるか、その感性がわかりそうなターゲットを探す

♠注意しておきたい② – 多文化チームではローコンテクストのコミュニケーションのすすめ

もうひとつ注意しておきたいことは、コンテクスト文化の違う人がチームで仕事をする場合、情報不足であったり、誤解によるコミュニケーションのすれ違いが起こりやすいことがあります。チームが異文化の人たちから構成されている場合は、内容を「わかる化」できるようにローコンテクストのコミュニケーションをお勧めします。すべてを言語化できなくても少なくとも、チーム全員が誤解がないように情報発信・情報共有することが大切です。

次回は、感性情報の見える化(可視化)・聴こえる化(可聴化)について取り上げる予定です。

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