ひとの五感というツール

Five senses

感性といえば、ユーザー感性を測定し、可視化する技術開発が盛んに行われています。例えば、匂い、触覚、食感といった感じた本人しかわからない感覚を脳波から読み取ったり、肌が感じる触力を読み取るハプティクス技術も盛んに開発されています。

その一方で、海外では、いかに「ひとの五感が生活やビジネス活動に重要か」を見直す動きもあります。ここでは、コミュニケーションやマネジメントの分野で見直されている五感(Human Senses)について、取り上げていきます。

ひとの五感とコミュニケーション

ビジネスコミュニケーションでは、ひとに感動を与えるストーリーテリング(エピソードや物語として内容を伝える)手法が多く活用されるようになりました。例えば、プレゼンテーションにおいても、データを見せる代わりに動画を使うシーンも増えてきていますし、ウェブやモバイルのサイトでも、内容を伝えるのに写真や動画が多く使われています。この何かに感動する内容を伝えるためには、視覚、聴覚、触覚などのひとの感覚を通して内容を感じ取ってもらう必要があります。このことから、ひとの五感に訴えるセンサリーマーケティング(Sensory Marketing、感覚マーケティング)が広がってきています。

センサリー評価からセンサリーマーケティングへ

以前は、センサリー(Sensory)といえば、食品などの分野で、官能評価(Sensory Evaluation)として物の特性をひとの感覚を物差しとして製品の評価をすることが主流でしたが、最近は、センサリーと消費者調査(Sensory and Consumer Resaerch)として、消費者が感じる感覚を解読し、その内容をマーケティングコミュニケーションや商品デザイン等に活用されるようになりました。今では、センサリーブランディングというように、顧客とブランドのつながりを強めるために五感に響くブランドコミュニケーションが行われています。例として、よく取り上げられるのが、スターバックスです。

リーダーシップと五感

組織のマネジメントにおいても、ひとを理解し、チームを導く上でも、五感が重要な役割を果たしていると再認識されています。具体的には、フランスのHEC ParisのGauthier教授が、“Leading with Sense: The Intuitive Power of savoir-relier”の著書で、ひととの関係を築く上で五感の重要性を取り上げています。日本でも、まだまだ「場の空気を読む」ことがコミュニケーションでは大切な要素です。組織やコミュニティが人から形成されていることを考えると、私たちの「感度」というセンサーもビジネスや日常生活では、重要なものと言えます。

五感を磨き続ける

そう考えると、道具を手入れしないとさびついてしまうように、私たちの感覚も常に磨いておかないと、さびついてしまいます。技術開発で様々な感性を測る機器が開発されていますが、私たちの五感というツールも、常に新しいものに触れたり、意識して回りのものやことに触れることで、バーションアップしていくことが大切だと思います。ビジネスにおいては、感覚というセンサーを研ぎ澄ますことで、新しいものやコトを、新しい形で生み出すことにつながるのではないでしょうか。

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